News レアアースとは?レアメタルとの違い、用途、問題をわかりやすく解説
目次
まずはじめに・・
「ニュースでよく聞くけど、レアアースって何?」「レアメタルとは違うの?」
あなたも、スマートフォンや電気自動車(EV)の話題で、これらの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。なんとなく「ハイテク製品に欠かせない貴重な資源」というイメージはあっても、その正体や重要性、そして裏に潜む問題点までを詳しく知る機会は少ないのではないでしょうか。
この記事では、そんな疑問を持つあなたのために、レアアースとレアメタルの基本から、私たちの生活との関わり、そして世界が直面する課題までを、専門用語を極力使わずに分かりやすく解説します。
この記事を読めば、明日からのニュースがもっと深く理解できるようになるはずです。
レアアースとレアメタルの違い
まず、最も基本的な疑問である「レアアース」と「レアメタル」の違いをはっきりさせましょう。この2つはよく混同されますが、実は明確な違いと関係性があります。
レアアースは17種の希土類元素の総称
レアアース(Rare Earths)とは、特定の17種類の元素の総称です。「希土類元素(きどるいげんそ)」とも呼ばれます。
具体的には、周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)と、ランタノイド系の15元素(ランタン、セリウムなど)を合わせたものです。これらの元素は、互いに化学的な性質がよく似ているという特徴があります。
レアメタルは産業に重要な希少金属
一方、レアメタル(Rare Metals)とは、地球上の存在量が少なかったり、採掘や精製にかかるコストが非常に高かったりするため、流通・使用量が少ない非鉄金属の総称です。日本語では「希少金属」と呼ばれます。
実は、レアメタルには国際的に統一された定義はありません。日本では、経済産業省が産業に不可欠な34種類の金属をレアメタルとして定めています。 (参考:経済産業省 鉱物資源政策 https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/mineral_resource/policy/index.html)
【図解】レアアースはレアメタルの一種
ここが重要なポイントです。レアアース(17元素)は、レアメタル(34種)という大きな枠組みの中に含まれる関係にあります。
- レアメタル(大きなグループ)
- リチウム、チタン、コバルト、ニッケル、白金など
- レアアース(レアメタルの中の特定のグループ)
- ネオジム、ジスプロシウム、イットリウムなど17元素
つまり、「すべてのレアアースはレアメタルである」と言えますが、「すべてのレアメタルがレアアースである」わけではありません。この関係性を理解することが、両者を正しく把握する第一歩です。
レアアースの主な使い道と製品例
では、レアアースは具体的に私たちの生活の中で、どのような製品に使われているのでしょうか。その優れた特性から「産業のビタミン」とも呼ばれ、現代のハイテク技術に欠かせない存在となっています。
EV・ハイブリッド車の強力モーター
電気自動車(EV)やハイブリッド車の心臓部である高性能モーターには、世界最強の磁石といわれる「ネオジム磁石」が不可欠です。
この磁石は、レアアースの一種であるネオジムやジスプロシウムを添加することで作られます。特にジスプロシウムは、磁石が高温になっても磁力を失わないようにする重要な役割を担っており、モーターの小型化・高効率化に貢献しています。
スマートフォン・PCの電子部品
私たちが毎日使うスマートフォンやパソコンにも、多くのレアアースが使われています。
- ディスプレイ イットリウムやユーロピウムなどが、鮮やかな色彩を表現する発光材料として活躍しています。
- スピーカー・マイク 小型でもパワフルな音を出すために、ネオジム磁石が使われています。
- バイブレーション機能 モーターを振動させる部品にも、ネオジム磁石が内蔵されています。
- ハードディスク データを記録するヘッド部分に、精密な動きを実現するためネオジム磁石が使われます。
風力発電機・LED照明・光ファイバー
クリーンエネルギーや省エネ技術にも、レアアースは欠かせません。
- 風力発電機 大型の発電機には、EVと同様に強力なネオジム磁石が大量に使われます。
- LED照明 白色LEDの光を作り出すための蛍光体に、イットリウムやセリウムなどが使われています。
- 光ファイバー 光信号の増幅器にエルビウムというレアアースが使われ、長距離の高速通信を可能にしています。
このように、レアアースは目に見えないところで、私たちの快適で便利な暮らしと、持続可能な社会の実現を支えているのです。
レアアースの産出国と埋蔵量
これほど重要なレアアースは、世界のどこで採掘されているのでしょうか。その産出状況は、国際的な経済や安全保障に大きな影響を与えています。
生産量・埋蔵量ランキングと中国のシェア
米国地質調査所(USGS)の2024年の報告によると、2023年のレアアース生産量(推計)は以下のようになっています。
- 中国: 240,000トン (シェア約70%)
- アメリカ: 43,000トン
- ミャンマー: 38,000トン
- オーストラリア: 18,000トン
(出典:U.S. Geological Survey, Mineral Commodity Summaries 2024 https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2024/mcs2024.pdf)
このデータが示す通り、世界のレアアース生産は中国が圧倒的なシェアを占めています。埋蔵量でも中国はトップですが、生産量ほどの独占状態ではありません。これは、中国が長年にわたり、環境コストを度外視して安価なレアアースを供給してきた結果、他国の鉱山が次々と閉鎖に追い込まれた歴史的経緯があります。
中国の輸出規制と地政学リスク
特定の一国に供給を依存することは、大きなリスクを伴います。これを地政学リスクと呼びます。
記憶に新しいのは、2010年に起きた尖閣諸島沖での漁船衝突事件です。この際、中国は事実上の対日輸出規制を行い、日本国内の産業界は大きな混乱に陥りました。
このように、資源が外交のカードとして使われることで、サプライチェーン(供給網)が寸断されるリスクが常に存在します。近年も米中対立の激化に伴い、中国が先端技術に必要なレアアースの輸出管理を強化する動きを見せており、世界的な懸念材料となっています。
米国・豪州・ミャンマーの動向
こうした中国への過度な依存から脱却するため、世界各国でサプライチェーンの多様化が進められています。
- アメリカ かつて世界最大の生産国でしたが、中国との価格競争に敗れて閉山。近年、国内唯一の鉱山を再稼働させ、生産量を急速に増やしています。
- オーストラリア 豊富な資源量を背景に、中国以外への供給拠点として存在感を高めています。
- ミャンマー 近年、特に重希土類(ジスプロシウムなど)の主要な供給国として台頭していますが、政情不安が安定供給の課題となっています。
各国は、自国の経済安全保障を守るため、レアアースの安定確保にしのぎを削っているのです。
採掘・精製プロセスに伴う3つの問題点
レアアースは現代社会に不可欠な一方、その採掘から製品になるまでのプロセスには、深刻な問題が潜んでいます。特に環境への影響や放射能のリスクは、無視できない課題です。
環境問題(土壌・水質汚染)
レアアースの採掘と精製は、大規模な環境破壊を伴うことがあります。
- 採掘 鉱石を掘り出すために広大な土地が削られ、大量の不要な土砂(廃石)が発生します。
- 選鉱・精製 鉱石から目的のレアアースを取り出すために、硫酸や塩酸といった強力な化学薬品が大量に使用されます。この過程で生じる有害物質を含む廃液が、適切に処理されずに河川や土壌に流出し、深刻な水質汚染や土壌汚染を引き起こすケースが後を絶ちません。
放射能(放射性物質)の発生リスク
**「レアアースには放射能がある?」**という疑問をよく耳にしますが、これは半分正しく、半分誤解です。
正確には、レアアース鉱石には、不純物としてウランやトリウムといった自然由来の放射性物質が含まれていることが多くあります。 レアアース自体が放射能を持つわけではありません。
問題は、精製プロセスでレアアースを濃縮する際に、これらの放射性物質も一緒に濃縮されてしまうことです。その結果、放射性物質を含む汚染土や廃液(放射性廃棄物)が発生します。これらがずさんに管理されると、周辺環境を汚染し、地域住民の健康に深刻な被害を及ぼす危険性があります。
供給網の脆弱性と利権問題
前述の通り、レアアースの供給は中国に大きく依存しており、非常に脆弱な状態です。この偏在は、価格の急騰や供給停止のリスクだけでなく、産出国内での利権問題も生み出しています。
一部の地域では、レアアースの利益を巡る利権争いや、環境規制を無視した違法採掘が横行しています。こうした違法採掘は、さらなる環境破壊や労働者の健康被害につながる悪循環を生んでいます。
日本のレアアース確保に向けた取り組み
資源のほぼすべてを輸入に頼る日本にとって、レアアースの安定確保は国家的な重要課題です。そのため、政府と企業が一体となって、さまざまな取り組みを進めています。
サプライチェーンの多様化戦略
中国一国への依存から脱却するため、**供給元を複数の国に分散させる「サプライチェーンの多様化」**が急がれています。
具体的には、オーストラリアやアメリカ、カナダ、ベトナムといった国々の鉱山開発プロジェクトに、日本の企業や政府系機関(JOGMECなど)が出資・協力し、日本への安定供給ルートを確保しようとしています。
都市鉱山からのリサイクル技術
日本国内に眠る膨大な資源、それが「都市鉱山」です。
都市鉱山とは、使用済みのスマートフォンやパソコン、家電製品などに含まれる金属資源を、鉱山に見立てた言葉です。これらの製品からレアアースを回収し、再利用するリサイクル技術の開発が活発に進められています。リサイクルは、環境負荷を低減し、海外への依存度を下げるための切り札として期待されています。
代替材料の研究開発と海洋資源探査
レアアースを使わない、あるいは使用量を大幅に削減できる新しい材料の開発も重要な取り組みです。例えば、ネオジム磁石の性能を維持しつつ、高価なジスプロシウムの使用量を減らす技術などが研究されています。
さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)内、特に南鳥島沖の海底に、大規模なレアアース泥が発見されたことは大きなニュースとなりました。現在は、商業化に向けた採掘技術や環境への影響評価などの調査研究が進められています。
レアアースに関するよくある質問
最後に、レアアースに関して多くの人が抱く素朴な疑問にお答えします。
レアアースの放射能は危険?
最終製品であるスマートフォンやEVに、放射能の危険性はありません。
問題となるのは、あくまで採掘・精製の現場で発生する放射性廃棄物です。これらが適切に管理されず環境中に放出された場合に、健康へのリスクが生じる可能性があります。製品として流通するレアアースは、安全なレベルまで精製・管理されています。
なぜ「アース(土)」と呼ばれる?
レアアースは、発見された当初、分離が難しい「酸化物」の形で見つかりました。この酸化物の見た目が、土(英語でEarth)に似ていたことから、「珍しい(Rare)土(Earth)」=レアアースと名付けられたといわれていますレアアースの価格が高い理由は?
レアアースの価格が高い主な理由は、以下の3つです。
- 精製が難しい 性質が似ている17種類の元素を分離・精製するには、複雑な工程と高い技術、コストがかかります。
- 供給国が偏っている 生産が中国に集中しているため、需要が増えたり、供給が絞られたりすると価格が高騰しやすくなります。
- 環境対策コスト 環境問題や放射性物質への対策を適切に行うと、その分コストが上昇します。安価なレアアースは、こうしたコストを無視している可能性があります。
まとめ
今回は、レアアースとレアメタルの違いから、その用途、産出国の状況、そして採掘・精製に伴う問題点までを解説しました。
- レアアースとレアメタルの関係 レアアースは、レアメタルという大きな枠組みに含まれる17元素のグループ。
- 重要な使い道 EVのモーター、スマホの部品、風力発電機など、現代のハイテク製品に不可欠。
- 供給のリスク 生産の約7割を中国に依存しており、地政学リスクが高い。
- 抱える問題点 採掘・精製過程で、土壌汚染などの環境問題や、放射性廃棄物の発生リスクがある。
- 日本の取り組み 供給網の多様化、都市鉱山からのリサイクル、代替材料開発などで安定確保を目指している。
レアアースは、私たちの便利な暮らしを支える一方で、環境や国際情勢と密接に結びついた複雑な課題を抱えています。この記事を通じて、ニュースの裏側にある「なぜ?」を考えるきっかけになれば幸いです。
Writer:kitamura