News 住宅ローン利上げの影響は?変動金利と不動産価格の今後
目次
まずはじめに・・
「日銀が利上げに踏み切った」「住宅ローン金利が上がるかもしれない」 最近、このようなニュースを目にして、ご自身の住宅ローンやマイホーム計画に不安を感じていませんか?
特に変動金利でローンを組んでいる方や、これから住宅購入を考えている方にとって、金利の動向は家計に直結する大きな問題です。
- 「変動金利は、いつ、どのくらい上がるの?」
- 「金利が上がると、家の価格は下がるの?」
- 「今、家を買うべき?それとも売るべき?」
この記事では、そんな疑問や不安を解消するため、住宅ローンと不動産価格の今後の見通しを専門家の視点から分かりやすく解説します。金利上昇の仕組みから、具体的な対策までを網羅していますので、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の最適な判断にお役立てください。
変動金利と不動産価格の今後の見通し
まず、多くの方が最も気になっている「変動金利」と「不動産価格」が今後どうなっていくのか、専門家の一般的な見解を基に解説します。
専門家による変動金利の短期・中期予測
結論から言うと、専門家の間では「変動金利は短期的には急上昇せず、中長期的には緩やかに上昇する」という見方が主流です。
短期的な見通し(〜1年) 2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除しましたが、多くの銀行は住宅ローンの変動金利をすぐに引き上げていません。これは、銀行間の顧客獲得競争が激しく、安易な利上げが顧客離れに繋がることを懸念しているためです。そのため、当面は大きな金利変動はないと予測されています。
中期的な見通し(2〜5年) 日本の物価や賃金の上昇が続けば、日銀が追加利上げに踏み切る可能性があります。その場合、変動金利も追随して上昇すると考えられます。ただし、急激な利上げは経済への影響が大きいため、0.25%程度の小幅な利上げが段階的に行われるシナリオが有力視されています。
不動産価格の動向予測
金利が上がると、理論上は住宅ローンを借りにくくなるため、不動産価格には下落圧力がかかります。しかし、現在の不動産市場は金利以外の要因も大きく影響しています。
価格を押し上げる要因 資材価格や人件費などの建築コスト高騰は続いており、これが新築物件の価格を下支えしています。また、都心部では再開発や富裕層・海外投資家による需要が根強く、価格は高止まりしています。
今後の予測 これらの要因から、不動産価格は全国一律で下落するとは考えにくい状況です。今後は「都心部や利便性の高いエリアは高止まり、もしくは緩やかに上昇」「郊外や地方の一部エリアでは需要の落ち着きとともに価格が調整(下落)」といった二極化がさらに進むと予測されています。
変動金利がすぐには上がらないと言われる理由
「日銀が利上げしたのに、なぜ変動金利はすぐに上がらないの?」と疑問に思う方も多いでしょう。これには明確な理由があります。
住宅ローンの変動金利の多くは、「短期プライムレート」という指標に連動しています。この短期プライムレートは、日銀の政策金利に影響を受けつつも、最終的には各銀行が経営判断で決定します。
現在、銀行は住宅ローン市場で激しいシェア争いを繰り広げています。そのため、日銀が政策金利を少し上げたからといって、すぐに住宅ローン金利に反映させてしまうと、他行に顧客を奪われかねません。このような銀行側の事情が、変動金利の急上昇を抑えるブレーキの役割を果たしているのです。
変動金利はいつ、どのくらい上がるのか
変動金利の今後の動向をより深く理解するために、金利が変動する仕組みや、過去の利上げ局面での動きを見ていきましょう。
変動金利が上昇する仕組みと短期プライムレート
まず、「変動金利とは、一般的に半年に一度、金利が見直される住宅ローン」のことです。この金利の基準となっているのが、先ほども触れた「短期プライムレート」です。
短期プライムレートは、銀行が最も信用力の高い優良企業へ1年以内の短期で貸し出す際の最優遇金利を指します。日銀が政策金利を引き上げると、銀行が資金を調達するコストが上がるため、短期プライムレートも上昇する傾向にあります。
多くの銀行では、この短期プライムレートを基準に、個人の信用力などに応じた「優遇幅」を差し引いて、実際の住宅ローン適用金利を決定しています。
日銀の金融政策と今後の利上げタイミング
金利の方向性を決める上で最も重要なのが、日本銀行の金融政策です。
日銀は2024年3月、約17年ぶりとなる利上げ(マイナス金利政策の解除)を決定しました。これは、長年のデフレから脱却し、持続的な物価上昇が見えてきたと判断したためです。
今後の追加利上げのタイミングは、「物価と賃金の好循環」が確実になるかどうかにかかっています。日銀は定期的に「金融政策決定会合」を開いており、市場関係者はその内容を注視しています。専門家の間では、経済が順調に推移すれば2024年後半から2025年にかけて、追加利上げが行われる可能性があると見られています。 (参考:日本銀行「金融政策決定会合の開催日」)
過去の利上げ局面から見る金利の上がり幅
将来を予測する上で、過去のデータが参考になります。直近の利上げ局面は2006年〜2007年でした。
この時、日銀は政策金利を0.25%ずつ、2回にわたって引き上げました。それに伴い、多くの銀行の短期プライムレートも合計で0.5%程度上昇しました。
ただし、当時と現在では経済環境や住宅ローン市場の競争状況が大きく異なります。そのため、過去と同じペースや幅で金利が上昇するとは限らない点には注意が必要です。返済額への影響シミュレーション
では、実際に金利が上昇すると、毎月の返済額はどのくらい増えるのでしょうか。具体的な条件でシミュレーションしてみましょう。
【シミュレーション条件】
- 借入額:4,000万円
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済、ボーナス返済なし
| 0.4%(現在) | 約102,000円 | – |
| 0.65%(+0.25%) | 約107,000円 | +約5,000円 |
| 0.9%(+0.5%) | 約111,000円 | +約9,000円 |
| 1.4%(+1.0%) | 約121,000円 | +約19,000円 |
※概算値です。実際の返済額は金融機関や契約内容により異なります。
このように、金利が1.0%上昇すると、月々の返済額は約19,000円も増加します。ご自身の借入額で計算し、家計がどの程度の上昇まで耐えられるかを把握しておくことが大切です。
金利上昇による不動産価格への影響
金利と不動産価格は密接な関係にあります。ここでは、その関係性や今後の価格変動について、より詳しく見ていきましょう。
金利と不動産価格の相関関係
一般的に、金利と不動産価格には「負の相関関係」があると言われています。
金利が上昇すると… 住宅ローンの返済負担が増えるため、家を買える人が減ります(購買力の低下)。その結果、住宅需要が減少し、不動産価格は下落しやすくなります。
金利が下落すると… 住宅ローンの返済負担が軽くなるため、家を買いやすくなります(購買力の上昇)。その結果、住宅需要が増加し、不動産価格は上昇しやすくなります。
これが基本的なメカニズムですが、実際の不動産価格は、景気動向、建築費、人口動態、税制など、様々な要因が複雑に絡み合って決まります。
過去データで見る金利上昇と住宅価格の推移
過去のデータを見ると、金利の上昇が必ずしも不動産価格の即時下落に繋がっているわけではないことが分かります。
例えば、バブル経済期には金利が上昇する中でも不動産価格は高騰を続けました。また、近年の低金利環境下では、特に都市部で不動産価格が大きく上昇しています。これは、金利以外の要因(経済成長への期待、海外からの資金流入、建築費の高騰など)が価格に強く影響した例です。
金利はあくまで価格変動要因の一つであり、「金利が上がったから、すぐに不動産価格が暴落する」と考えるのは早計と言えるでしょう。 (参考:国土交通省「不動産価格指数」)
エリア別(都心・郊外)の価格変動予測
今後の不動産価格は、エリアによる二極化が一層鮮明になると予測されます。
都心・主要都市 交通の便が良く、生活利便性の高いエリアは、国内外からの需要が根強くあります。そのため、金利が多少上昇しても需要は底堅く、価格は高止まり、もしくは緩やかに上昇を続ける可能性があります。
郊外・地方 テレワークの普及で一時的に需要が高まったエリアもありますが、都心ほどの強い需要がない場所では、金利上昇による購買力低下の影響を受けやすくなります。そのため、一部のエリアでは価格が調整局面に入り、下落する可能性も考えられます。
物件種別(マンション・戸建て)ごとの影響
物件の種別によっても、金利上昇の影響の受け方は異なります。
マンション 特に駅近など利便性の高い新築・築浅マンションは、資産価値が維持されやすい傾向にあります。ただし、近年は高額なペアローンを組んで購入する世帯も多く、金利上昇によって返済が苦しくなった層からの売り物件が増加する可能性も指摘されています。
戸建て 戸建て価格は、建物価格と土地価格で構成されます。建築費の高騰が続いているため、建物価格は下がりにくい状況です。一方、土地価格はエリアの需要に大きく左右されるため、郊外の物件などは金利上昇の影響を受けやすい可能性があります。
住宅購入・売却の最適なタイミング
金利や不動産価格の動向を踏まえ、住宅の「買い時」「売り時」をどう判断すればよいのでしょうか。
これから住宅購入する場合の判断基準
これから住宅を購入する方は、主に2つの考え方があります。
考え方1:金利が本格的に上昇する前に購入する 変動金利がまだ低いうちにローンを組むことで、低金利の恩恵を受けられます。将来の金利上昇リスクはありますが、固定金利もまだ比較的低い水準にあるため、今のうちに固定金利で借りて返済額を確定させるのも賢い選択です。
考え方2:金利上昇による不動産価格の下落を待つ 金利上昇によって不動産価格が下がるのを待ってから購入する戦略です。ただし、価格が期待通りに下がる保証はなく、待っている間に金利がさらに上昇してしまうリスクもあります。
【結論】 ライフプラン(子供の進学、転勤など)から「今、家が必要」であり、無理のない資金計画が立てられるのであれば、物件価格と金利のバランスが良い今も購入の好機と言えます。ただし、将来の金利上昇を見越して、借入額は慎重に検討しましょう。
住宅売却を検討する場合の判断基準
住宅の売却を考えている方は、不動産市況が活況な今がチャンスとなる可能性があります。
金利が上昇して買い手の購買力が落ちる前に、価格が高いうちに売却して利益を確定させるのは有効な戦略です。特に、築年数が経過している物件や、郊外の物件をお持ちの場合は、早めの行動が吉と出るかもしれません。
ただし、売却後の住み替え先が決まっていない場合は注意が必要です。自宅を高く売れても、次に購入する物件も高値になっている可能性があるため、売却と購入のタイミングをセットで考えることが重要です。
買い替えを検討する際の注意点
買い替えでは、「売り先行」と「買い先行」のどちらを選ぶかが大きなポイントになります。
売り先行 自宅を売却して資金を確定させてから新居を探す方法。資金計画が立てやすい反面、希望の物件が見つかるまで仮住まいが必要になる場合があります。
買い先行 気に入った新居を先に購入してから自宅を売却する方法。仮住まいの手間が省けますが、自宅が想定通りに売れないと二重ローン(ダブルローン)になるリスクがあります。
金利上昇局面では、金融機関のローン審査が厳しくなる可能性も考慮し、自己資金に余裕を持たせた計画を立てることが、買い替えを成功させる鍵となります。
変動金利と固定金利どちらを選ぶべきか
金利上昇への不安が高まる中、改めて変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。それぞれの特徴を再整理し、あなたに合った金利タイプを考えます。
変動金利のメリット・デメリット再整理
メリット 最大のメリットは、金利の低さです。金利が低いまま推移すれば、総返済額を最も抑えることができます。
デメリット 最大のデメリットは、金利上昇リスクです。将来、金利が上昇すると返済額が増え、家計を圧迫する可能性があります。
固定金利(全期間・期間選択型)の利点
全期間固定金利(フラット35など) 借入期間中、金利と返済額が一切変わらないのが最大の利点です。将来の金利上昇を心配する必要がなく、長期的な資金計画が立てやすいという安心感があります。変動金利より当初の金利は高めに設定されています。
期間選択型固定金利 当初の一定期間(3年、5年、10年など)だけ金利が固定されるタイプです。固定期間中は返済額が変わりません。子育て期間中など、特定の期間だけ支出を安定させたい場合に有効です。期間終了後は、その時点の金利で変動金利か固定金利を選び直します。
金利上昇局面でおすすめの金利タイプ
どの金利タイプが最適かは、あなたの家計状況やリスクに対する考え方によって異なります。
全期間固定金利がおすすめな人
- 金利上昇への不安が強く、安心を最優先したい人
- 今後、教育費などで支出が増える予定があり、返済額を確定させておきたい人
- 毎月の返済額が変わると家計管理が難しいと感じる人
変動金利がおすすめな人
- 金利上昇リスクを許容でき、低金利のメリットを最大限に活かしたい人
- 金利が上昇しても繰り上げ返済できる十分な貯蓄がある人
- 借入期間が短い、または借入額が少ない人
最終的には、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、ご自身のライフプランに合った選択をすることが最も重要です。
金利上昇に備える具体的な対策
すでに変動金利で住宅ローンを返済中の方も、今からできる対策があります。将来の金利上昇に備え、家計を守るための具体的な方法をご紹介します。
変動金利から固定金利への借り換え
金利上昇への不安が強い場合、変動金利から固定金利への借り換えは有効な手段です。金利が本格的に上昇する前に借り換えれば、その後の返済額を確定させることができます。
ただし、借り換えには登記費用や保証料などの手数料がかかり、再度住宅ローンの審査も必要です。現在のローン残高や残りの返済期間、金利差などを考慮し、手数料を払ってでも借り換えるメリットがあるかを慎重にシミュレーションしましょう。
資金計画の見直しと繰り上げ返済の検討
金利上昇に備える最も基本的な対策は、繰り上げ返済でローン元金を減らしておくことです。元金が減れば、将来金利が上昇した際の利息負担を軽減できます。
繰り上げ返済には、以下の2種類があります。
期間短縮型 毎月の返済額は変えずに、返済期間を短くする方法。利息の軽減効果が大きく、総返済額を減らしたい場合に有効です。
返済額軽減型 返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らす方法。目先の家計負担を軽くしたい場合に有効です。
金利上昇局面に備えるなら、利息軽減効果の高い「期間短縮型」がおすすめです。ただし、手元の資金を使いすぎないよう、生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)は必ず確保しておきましょう。
5年ルールと125%ルールの確認
多くの銀行の変動金利には、返済額の急激な変動を緩和するためのルールが設けられています。
5年ルール 金利が上昇しても、毎月の返済額は5年間は変わらないというルールです。
125%ルール 5年後の返済額見直し時に、新しい返済額は直前の返済額の1.25倍(25%増)が上限となるルールです。
これらのルールは返済額の急増を防ぐセーフティネットになりますが、注意点もあります。返済額が変わらない期間でも、水面下で金利が上昇していると、返済額に占める利息の割合が増え、元金の減りが遅くなります。最悪の場合、毎月の返済額が利息額を下回り、「未払い利息」が発生するリスクもあります。
また、一部のネット銀行などではこれらのルールが適用されない場合もあります。ご自身の住宅ローン契約書を改めて確認し、ルールの有無を把握しておくことが非常に重要です。
まとめ
今回は、住宅ローンの利上げが変動金利や不動産価格に与える影響について解説しました。最後に、この記事の要点をまとめます。
変動金利の見通し 短期的には急上昇の可能性は低いものの、中長期的には緩やかに上昇していくと予測されています。
不動産価格の見通し 金利だけでなく建築費や需要など複数の要因で決まるため、一律の下落は考えにくい状況です。都心と郊外での二極化が進むでしょう。
購入・売却のタイミング 市況も重要ですが、最も大切なのはご自身のライフプランと無理のない資金計画です。焦りは禁物です。
金利上昇への備え 金利タイプ選びはご自身のリスク許容度に合わせて慎重に。変動金利の方は、繰り上げ返済や借り換えの検討を今から始めておきましょう。
金利や不動産価格の先行きは不透明で、不安に感じるのは当然のことです。しかし、正しい知識を身につけ、ご自身の状況に合わせて早めに対策を打つことで、リスクをコントロールすることは可能です。
この記事が、あなたの最適な意思決定の一助となれば幸いです。